気持ちがつらくて動けないときは、いろいろなことができなくなって、よけいに自分を責める。
人は落ち込んだら、サクサクと動けない。そんなことは当たり前なのに、
この病になると、とたんに自分を責める材料に切り替えてしまう。
今までできていたことを全部いっぺんにやる必要はないのだ。
そんなことは、病が治ってから「できるようになる」練習をすればいい。
習慣づけ、をやり直せばいいだけのことだ。
そんなことよりも、いまは「とてもつらいのにできた」というところを味わうほうが、
よっぽど身体にも心にもよい効果が出る。
まず、眠るしかできない人は、寝てみよう。こんなにたくさん眠れるのか、と驚いてみよう。
それだけ、疲れているのだ。ああ、今まで大変だったんだなあ、心と身体。
今も毎日、疲れてるってことだなあ。
気持ちが弱まると、身体は休息を求めるんだ。
そういうことをしみじみ実感するために、眠っていいのだ。
少しだけ、なにか、できるようになってきたら。
少しだけ、気の向いた家事に着手してみる。
たとえば本棚の整理。
どうせ途中で疲れちゃって、本が散乱して、さらにそれで、イヤになるに決まっている。
頭の中ではそういう想像をしてしまうだろうから、たとえば棚ひとつ分。大きい本棚なら、半分でもいい。
段ボールや大きい紙袋をひとつ用意すれば、散らばって大変なことになる、なんてこともない。
どうしても取っておきたい大切な本、これはもう、処分してもいいかな、と思える本。
単純に、そういう感じで、最初は分類していこう。
途中で本を読み始めても、別に構わない。本を読む気力が湧いたなら、おめでとう! って話になる。
同じように、音楽のCD、映画のDVD、ゲームのソフト、洋服、趣味の小もの……。
自分が元気なときに好きだったものを、本当に少しずつ、整理整頓していくのだ。
絶対、大がかりにやろうとは思わないこと。
それは普段だってなかなか手がつけられないんだから、小さい変化を繰り返すこと。
最初にザッと仕分けしてから、そのあと改めて並べ直してみてもいい。
繰り返すことで、いろいろ、頭を働かせることができる。だから二度手間・三度手間もOKだ。
ほかに、掃除でも洗濯でも、押し入れの整理でもいい。毎日ゆっくり、少量ずつ。
とにかく、そうやってほんの少し動くことで、「すがすがしさ」と「達成感」を味わえるのだ。
人の脳はやり始めてからしか「やる気」は出ないから、着手するまでがなかなか面倒だと思う。
でも、ダマされたと思って、ちょっとだけやってみてほしい。
単純な行動による小さな達成感の積み重ねが、今のあなたの心に、どれくらい明るさを
もたらしてくれるか。それはまさに、やってみればわかるのである。
たぶんきっと、少しくらいなら、そういうゆとりの時間はあるはず。
本当は散歩などでもいいのだけれど、それこそ継続は難しいだろうから、まずは家の中で、
自分で自分のハードルをあげないように気をつけながら、ゆっくりやっていこう。
子どものように、「できた!」って思えたりすると、ただそれだけで楽しいよ。
そして今は、それでいいのだ。小さなことこそが、あなたの心に効く“練習”になるのだ。