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今は無理に進まなくても

これまで、人生でいろいろ、それなりにがんばってきた、と思える人にとっても、

もともと自分はダメだ……と思い続けてきた人にとっても、

鬱という病によってものごとが進められなくなってしまったことは、とてもつらい。

だいたい、今の世の中は震災以降、なんだか暗いニュース中心だし、

復興と言っても原発事故が収束を見せないなかでは、

この先どうなっていくんだろう、という思いのほうが皆、強いだろう。

ある意味、日本全体が停滞しているのだ。

そんな状況下でさらに、自分はダメージを負っているわけだから、

遅々としてものごとが進まなければ、不安が大きくなるのは当たり前の話である。

でも、正直、日本が停滞するのは仕方ない。だって被害が大きすぎる。

観測史上最も大きい地震が起こり、チェルノブイリを遥かに超えている勢いの事故が起こっている。

日本に住めなくなると考える人もたくさんいるくらい、大変な状況なのだ。

この先いったい、どうなるのか……と思う人が、あなただけではなくなった、という言い方のほうが、

きっとより的確に、今の状況を表しているのだと思う。

ただ、今現在、この国に住み、生活を「していかなくちゃいけない」なかでは、

「そんなことばっかりも言っていられない」という現実がある。

こんな言い方が正しいのかどうかはわからないけれど、これまで他の人と自分を比べ、

どうしても自分を卑下し続けている人は、「皆、サクサクと進めなくなっている部分がある」ということを、

今一度、認識してほしいのだ。

そう、今は本当に、焦らなくてもいい。

サクサク進まなくても、ある意味、当たり前で、

自分だけがダメ、という観点で、落ち込み続けなくてもいいのだ。

今の日本の状況下で、今後、「生き直したい、役に立ちたい」と思うのであれば、

何よりまず、その「鬱々とした気持ち」を回復させることが、とてもとても重要だ。

正直、これから何が起こるかわからない状態ではあるし、不安になる人や落ち込む人も増えていく。

であれば、すでにもう「鬱々」気分を経験しているあなたが、そこから元気を取り戻していけば、

「できること」「役に立てること」はたぶん、増えてくる。

周囲の人の話を聞いてあげたり、気分転換のコツを教えてあげることだけでも可能だろうし、

それはこれから大切なポイントになりうるのである。

人の心を和らげるなど、メンタルケア・ヘルスケアの技や、

復興に協力できそうな技術を何か持っているのであれば、

それによって貢献することもできる。しかもそれは、「先の長い」話である。

そのためにも今、気持ちが痛んでいる人は、ぜひ、そこから離れていくことに集中してほしい。

あなたの今のその気持ち、その暗闇を見た・感じたという経験は、今後、いろいろな面で、

必ず社会の役に立つはずなのだ。しかも比喩でなく、実際に、具体的に。

悲しくて残念な話だけれど、そういう日本になってしまったからこそ、

今は決して無理に進まず、自分をいたわり、その経験をしっかりと「自分の糧」にしていくことに

心を傾けてほしい、と、私には思える。

心の痛みを知っている人は、必ず、他の人の痛みを受けとめられるようになる。

そしてそういう人はきっと、これからますます、必要とされるようになっていくのだから。

自分のなかにある「暗さ」

自死を一度、真剣に考えたことのある人は、そこから離れることができたとしても、

またあの「暗闇」に向き合うことになるんじゃないか、という一種の「怖れ」を抱くという。

私も、鬱病という病に対して、また自死という選択肢に対しての「怖れ」は、確かに持っている。

その暗さを肌身で実感したゆえの、気持ちなのだろう。

この「怖れ」は、何かがうまくいかなくなったときに、ひょこっと顔を出すことがある。

しょっちゅう、ではないけれど、ふとした拍子に。

そのたびに、ああ、また、そうなっちゃうかな、イヤだな、そうならないようにしないと……と感じる。

でも、考えてみればこれは、私のペースをある程度、変える役割を果たしている。

イヤだからこそ、無茶な働き方をしないように、と自分を戒めたり、

深く落ち込まないよう気分転換しよう、と、おいしいご飯をつくろうとか、お風呂に入ろうって思える。

コントロール、ということではなく、なんらかの「無理」を自分に強いることがなくなっているのだ。

もちろん、それによって「大きな冒険」には踏み出せなくなっているとも言える。

何か思い切り変化する方向へ「やってみよう」と思うことが、億劫になるのだ。

でも、少なくとも私は過去のある時期、自分の身体と心の状態を無視して、無茶して、がんばった。

あるときは上手くいったけど、たまたま上手くいかなかったときに、壊れた。

ハイリスク・ハイリターンの人生だった、というわけだ。自戒をこめ、苦笑しながら言うけれどね(^^;)

それはそれで、確かに楽しかった。うん、結構たっぷり、楽しんだ。ありがとう、もういいよ。

これからは、普通のペースに戻っていこう。

そんなふうに思えるのだ。

であれば、私のこの「怖れ」、暗闇を再び見つめてしまうんじゃないか、という気持ちも、

上手につきあっていけば、自分を「再び壊さないようにするためのバランスメーター」にできる。

別に、落ち込むときには、落ち込んだっていいのだ。

普通に生きていたって、暗くなることはあった。

そのあとで気分転換して、よし、仕方ない、やるか……って、思っていけるようになれば。

今、まさに死への選択肢が目の前にある人は、その「病」から離れることを何より大事にする。

離れても「暗さ」に覆われることがある人は、それが「バランスメーター」であると自覚する。

「暗さ」……自分に対する「怖れ」には、そうやって向き合い、共存していけばいいのだと、

それが新しい生き方なのだと、今の私には思える。

なぜうまくいかないのか、と思う人へ

死の選択肢が目の前にある人も、そこから少し離れることができた人も、

さらにもっと離れてはいるけれど鬱の人も、病にまでは至っていない抑鬱状態の人も、

ほぼ全員、タイトルのような気持ちに陥ることがあると思う。

普通に生活していたって、すぐには方針や方法が見つからず、しばらく静観なんてことがある。

それなのに鬱傾向にある人は、程度の差こそあれ、そうした状態をほぼすべて「マイナス材料」として使ってしまう。

これは、とてもやっかいだ。

自分が病気だ(あるいは落ち込んでいる)と頭では理解しつつも、

もう「そんな状態」でいること自体がつらく感じて、イヤになってしまう。

どうしてこんな。

何がいけなかったんだ。

どうして自分だけが。

いったいどうしたらいいんだ。

こんな私には、もう何もできない。

生きてて何の意味があるのだ。

そんな思いだけがグルグルするのである。

そうしたことを感じているのはあなただけではない。

慰めるつもりで言うのではなく、本当にたくさんの人がそれを感じている。

でも、あなたは自分だけが特別弱い、悪い、ダメなんだと思ったりして、

自分を責め続け、どうすることもできない、と思っている。

そして今はただ、そこから、その状況から逃げ出したいのである。

あなただけが、苦しいのではない。

人はそれぞれ、つらさや重さを多かれ少なかれ、背負っている。

だからといってあなたのつらさが軽くなるわけではないが、あなた“だけ”が情けないわけではない。

じゃあ、どうしてこんなに苦しいのか。どうして抜け出せないのか。どうしてそう思ってしまうのか。

私が今、感じていることだけれど、それはあなたにとって「あなた自身が特別」な存在だからだ。

あなたは、本当は幸せになりたい。

大切だと思える人と心から交流して、温かさや喜びをたくさん感じ、

自分の能力を発揮して人の役に立ち、

その見返りとして、物質的にも楽しめる生活を送りたい。

それは普通に誰もが思っていることだし、見返りのほうをより強く求める人もいれば

心が通い合うことを一番大切に感じる人もいるだろう。

なのに、それを実現していくのは自分自身であるとわかっているのに、思い通りに動けない。

あるいは、事態が上手く進まない、妨害される、等で、思った通りにならないのだ。

誰しも「自分自身が幸せになりたい」からこそ、なれなくて苦しんでいるのだ。

それは「欲」でもないし「自分勝手」でもない。

「自分だけが幸せになれればいい」と思う人は、心の通い合いという面での幸せを得られないだろう。

そんなのはいらない、と思う人も、中にはいるかもしれないが、

本当はどこかで、そうできる人を「いいな」と思っている自分も存在しているはずなのだ。

そして、自分にとって自分は特別な存在であること、それは「当たり前」なのである。

これまで、他者によって虐げられてきたと感じる人や、自分で自分をないがしろにしてきたと後悔する人など、

鬱になった理由はそれぞれだろうが、自分はとても、特別な、大切な存在であることは変わらない。

うまくいかなくなった原因は、いろいろあるだろう。

なかなか快方に向かわない理由も、いろいろあるだろう。

でも、自分にとって自分が大切であることを、“表面的ではない形”で当たり前だと感じられれば、

別に、そんな不器用な自分であっても、たまたまそうなっただけであり、それはそれで、もういいのだ。

そういうやり方で、幸せになっていく道を探したってこと。そのこと自体は別に、構わないのだ。

これからも苦難の道を選ぶ必要はない。

これまでつらかったのだから、もっと楽しく探していって構わない。

その方法論は、人によってさまざまだろう。また、今すぐサッと、見つかるわけでもないかもしれない

(そんなに簡単に解決できるなら、そこまで暗くはなっていないだろうしね)。

でも、自分にとって、自分は特別。すごく大切な存在。

そのことさえ覚えておけば、徐々にでも、自分につらく当たる気持ちを「やめよう」と切り替えられるし、

ちょっとだけ自分に優しくなったり、自分を喜ばせることをやってみようかな、と思えたり、

「馬鹿だったなあ」って、自分をいたわってあげることも、少しずつ、できるようになると思う。

だって本当はあなたにとって特別な人なんだもの。大切にしてあげたいよね、やっぱり。

そうやって、小さなことでちょっとずつでも、自分が大切な存在であることを、自分に認めてあげていいのだ。

客観的に考えても、あなたという人がこの世にあなた1人しかいないことも事実だし、

そう考えれば本当にあなたは「特別な、大切な存在」なのである。

もしなにか、失敗した出来事があったとしても、だ。

「反省」はしてもいいけど「後悔」はもういらない。過去には戻れないから。

あなたにとっての「上手くいかないやり方」をひとつ、見つけただけ。それをたまたま

ひとつ、覚えただけだ。

うまくいくやり方だって、きっと見つかる。あきらめないでいい。

何より暗い気持ちの今は、頭だって身体だって上手く働かない。だからこそ、焦らなくてもいいのだ。

特別な人を、本当は、心の奥では、困らせたくないよね?

それでいいのだ。

そんなふうにこれから先、少しずつでも構わないから、まずは「自分が特別な存在である」ことを

あなたがもっと感じていけますように……。

心から祈ります。