苦しかったときのこと(5)

そして、出口の曲がり角を選択する日は、唐突に訪れた。

12月中旬に入ってすぐ、1本の電話がかかってきたのだ。

友人の夫からだった。

彼は、友人が事故で急逝した、と告げた。

友人は、最初に入った会社の同期。

バブルの時代に、社会人としての楽しい時期を、

一緒に過ごした仲間だった。

大好きだった。ずっと、私の理解者でいてくれた人だった。

最近は彼女の子育てが忙しく、

会うことも、連絡を取る回数も、減ってはいた。

でも、子どもが幼稚園くらいになったら

またゆっくり過ごそうね、と、お互い了解し合っていた。

まさか、よりによってこんなときに、彼女が死ぬなんて。

頭が真っ白になり、翌日の通夜のことを聞くだけで精一杯だった。

仲間内で、彼女と一番仲が良かったのは私だったので、

夫だった人は、最初に私へ連絡をくれた。

それで、他の仲間たちには私から連絡することとなり、

数人に電話して用件だけ伝え、待ち合わせ場所を決めた。

通夜の日。

葬儀の会場に入るなり、目に飛び込んできたのは、

笑顔の彼女の遺影と、真っ白な菊の花の祭壇。

「あの彼女は、もういないのだ」

それは、もう「衝撃」でしかなかった。

ずっと、泣き続けた。どんなに泣いても、泣いても、泣いても、

涙は止まらなかった。

彼女には、二度と会えなくなったのだから。

~つづく~

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