このときに、やっと、自分で気づいた。
人が死ぬって、こういうことなんだ。
身内の葬儀のときとはまったく違う、重いつらさと悲しさが、
自分の中にはっきり、存在していた。
そして、側で一緒に泣いている仲間たちは、
自分と同じ思いを感じていた。
会えないなんて。もう二度と、会えないなんて、と。
……ああ、じゃあ、だめだ。今はちょっとまだ、死ねないや。
今、さらに私が死んじゃうと、
この仲間まで、おかしくなっちゃいそうで。
大切な人たちを、これ以上痛めつけてどうする。
私が今、死んだら、今度は彼女たちが鬱になるかもしれない。
自分がこの病気で、これほど苦しんでるのに、
大事な仲間を、同じ状態に陥れるかもしれない。
たとえ死ぬにしても、せめて、それだけは避けたい。
それだけは、私、人としてやっちゃだめだ。
もうちょっと、時期を待つしかない。
じゃあ、仕方ない、今は、とりあえず右に曲がろう。
どうせこの先また、すぐにT字路は現れるんだろうから、
そのときに「できるだけ迷惑をかけない死に方」を考えてみよう。
すぐに死ねないなら、しばらく生きるしかないのなら。
今のところは、1月から職場に復帰するしかないんだ。
こうして、「とりあえずしばらくは生きておく」ことにした。
復活できるとは、まったく思っていなかった。
自分の死が周囲に与えるダメージを、減らす方法を探してみなくちゃ。
そう考え、死という選択を単純に「中断」したのだ。
~つづく~