今日の話は、昨日の話の実践編、というか発展型だと思ってほしい。
「この人の意図はどこにあるのか?」を確認しながら話を聞こうとすると、
相手の言葉に自分の「解釈」を乗せられなくなる。
実際のところ、相手が何を言うつもりなのかは、合いの手を入れるように
「○○だよ」と言われたら、「そうですか、○○なんですね」と
言葉を重ねて確認していくしかないのである。
そうやって、間違いがないように言葉を集めていくこと……。
実はこれが、心理学などで「傾聴」と言われる作業になる。
自己の解釈や判断を交えず、ただ、相手に寄り添ってみる、ということに、勝手になっていくのだ。
たとえ相手が自分に怒っていようと、「何を怒っているのか」を正確に把握し、確認する作業のような感じ、
と言えばいいだろうか。
面白いことに、そうやってこちらが静かに話を聞くと、相手もだんだん、冷静にならざるを得なくなる。
こちらの目の中に、相手が、怒っている、あるいは困っている自分を見つけてしまうのだろうと、私には思える。
そして、ここからがすごいんだけど。
その相手の言葉にどう対応していけばいいのかを、こちらが考える前に、
相手のほうから「だから、こうしたらいいと思う」とか「本当は私は、こう考えてるんだよ」って、
言ってくれたりもするのだ。
もし相手が困っているときなどには、勝手に相手から、解決策が現れたりする。
こちらはただ、話を聞いているだけなのに。
これを何度か経験したからこそ、私は「答えは自分のなかに、すでにちゃんと用意されてるんだ」と
知ったのである。だって、目の前にそういう実例がどんどん、現れてくるのだもの。
これを経験し始めたのは、ちょうど、自分のこれからがどうなっていくのか、
どうすればいいのかがまったくわからなくなっていたとき(つまり、死ぬのはもう絶対やめ! と思えたけど
じゃあ、どうすればいいんだよ……と思っていたとき)だった。
自分はまだ、どうしたらいいか、全然見えてこないけど、そうか、私のなかにもきっと、
答えはあるんだろうな……私が今、見つけてないだけで。
と、思えたのだ。
で、実際、いろいろな人に話を傾聴してもらって、徐々に動き始めることも本当にできた、と。
なんだかね、これは本当に貴重な経験だった。
とくに、ちょっとずつ復活し始めて、いろいろな人の悩み話を聞いたりする機会が出てきたときに、
私がただ、話を聞くことで、相手は何かのきっかけや答えが見つけるのだ。
そして私自身も、そうした状況を間近に見られたことにより、
自分のなかに「用意されていて、いつか見つかる」答えがある! ということを
徐々に信じることができるようになった。しかも「人って、なんかすごいなあ」と思えて。
そうやって、お互いが深く静かに、感謝し合えちゃうのだ。
こうした「気持ち」がお互いをめぐって、お互い感謝できる状況になることを、
私は「美しい循環」と呼んでいるのだけれど、それができると本当に、深く静かに喜びが湧いて、満足する。
それを感じられたことは、本当に大きな収穫となった。
鬱にならなければ、こんなふうに意識すること、なかった……。
で、そういう感覚になってくると、たとえイヤな相手であろうと
とりあえず相手の話を聞いてみようかな、って思えて、まずは怒らずに済む。
聞いたうえで、理不尽だ! と改めて思えたら、相手が自分の言葉で何か、
続きを語り始めるのを待つか、それが無理な場合は「つまりはこういうことですね、
その部分で私がダメだった、ということですね」って確認できる。
それから、じゃあそれは、どうすればいいのか、と静かに、自分で考えられるのだ。
ここまで書けば、わかるだろうか。鬱になって以降「復活していく過程」で、
人の話をただ、受けとめてみようとするだけで、結局は自分が、変わってもいけるのである。
これを読んだだけでは「そんな簡単に……」と思うかもしれない。
でも、わざわざいきなり難易度「超A級」の相手に対して聞く練習をするのではなく、
まずは気楽な相手から、やってみるといいだろう。
だってどうせ、「自分を変えよう」なんて思っても、どうしていいかわからないときなんだもの。
自分で自分を変えられるほど、パワーもまだ、復活していない。
だからこそ、そういう弱った自分を守るためにも、相手からの言葉の受け止め方を変えてみるのだ。
それがやがて、巡り巡って、あなたの力になっていく。
そして、自分のなかの答えを見つける機会もやがて、訪れてくるのだ。
この「傾聴」は、実は鬱ではない人であっても、普段の生活で役に立つ。
その例についてはまさに今日! タイムリーにも、
心理カウンセラーの衛藤先生がブログで述べてくださっている。
衛藤先生は「心理学界のお笑いカウンセラー」という異名をお持ちで、
見た目はヤサ男なのに、講演を聞くと「中身は半分以上、大阪のオバチャンなのね」と思えるお方。
私は対人関係で「つい先読みして、段取って、成功しようとする」クセに気づいたので
なんとなく心理学をもっと知りたくなって、この方の講座に出た次第。
ある意味、クサイほどに涙あり、笑いあり、の、エンターテイナーだった。
体験講座は面白いよ~、と、一応お勧めしておく(笑)
あと、傾聴、さらにはアクティブリスニングのやり方については、
5月1日のブログで書いた鈴木先生の本や講座もお勧めである。
日本メンタルヘルス協会 衛藤信之のつぶやき
「なぜ、心理学なのか!」