あなたが生まれてくるとき
あなたの半分は 一番に お母さんの半分のもとにたどり着いた
何億といる 半分たちのなかで あなたが 一番のりだった
あなたが 生まれてくるとき
あなたは お母さんのお腹のなかで 少なくとも半年 たいてい約10ヵ月の間 育った
その間 お母さんも あなたも 大変だったけど
それを無事に乗り越えて 1人の人間として 誕生した
あなたが 育っていくとき
最初は上手に 消化できなかったり うまく身体が 動かせなかったりしたけど
おっぱいやミルクを飲んで いっぱい寝ながら 自分を成長させていった
やがて お座りできるようになって はいはいできるようになって 立ち上がれるようになった
それは全部 あなたが自分で 練習したの
うまく座れるように 動けるように 立ち上がれるように
最初はフラフラしたり 転んだりしたけど あなたは あきらめなかったの
だから だんだん上手に 動けるようになった
ご飯を食べるのだって そう
歯が生えたからって いきなり上手には噛めないし 飲み込めない
あなたは 周りの人の助けも借りながら 少しずつ ご飯を食べる方法を覚えていった
スプーンを握って フォークを握って お箸を握って
お水もコップから むせないように 飲めるようになっていった
そのころから もしかして 記憶はあるかな
小さかった自分が どんなに低い位置から世界を見上げ 見渡していたか
近所で出会う 初めてのお友達
初めての 風景 初めての 動物や昆虫 初めての 葉っぱ
本当に 最初は 何もかも全部 あなたには 初めてだったの
それをよく見て ときには勇気を出して触れて 色を 匂いを 感触を 覚えて
毎日 毎日 少しずつ 理解していったの あらゆることを 学んでいったの
人間なんだから 病気もする ケガもする 事故にも遭うかもしれない
それを乗り越えて あなたが いま ここで パソコンに向かってるのって
そうしたことを まさに全部 乗り越えて 生きてきたからなの
あなたは本当に 小さい小さいときから がんばって
命も落とさずに済んで だから今 そこにいるのよ
もちろん家族や友達 先生 仕事先の人 あなたを見守り 助けてきてくれた人たち
事件や犯罪が起こらないように 町全体を見守ってくれている人もいるし 火事を消したり
ものをつくったり 売ったり 本当にいろいろな人たちがいて 働いてくれて あなたは 生きてこられた
そうして 年を重ねていくごとに いろいろなことが起こってくるけれど
本当は そんな出来事で あなたの価値を はかる必要はない
テストで何点取ろうが 失敗しようが 成功しようが ケンカしようが 怒られようが 関係ない
あなたは すでに 生きている奇跡である
今まで 生きてきたというだけで 奇跡である
経験はすべて 経験でしかない
それ以外の何ものでもなく
経験すれば 時間とともに 消えていく
あなたという奇跡の価値を 損なうものではなく それらはすべて 通り道なだけだ
あなたは 生まれてくるときから 奇跡だったのだし
死ぬまで やっぱり奇跡のままだよ
頭のなかで 何を考えていたとしても その価値は 変わらない
あなたが今 「ここにいる」という奇跡は
誰が何を言おうと 周囲で何が起ころうと 変わらない
たとえ自分で信じられなくても 変わらないのだ
そのことだけでも どうか どうか わかってね