鬱という病になった人は、たいてい、自分を責め、否定を繰り返す。
そうなってしまった自分を弱いと思い、情けないと思い、キライと思い、この苦しい状況がイヤだと思い、
それなのに何もできない、ダメな人間だと思う。
どうしてそんなグルグルした思考に陥るのか。
だって、そういう「病気」だからである。
あなたは、自分の頭でなんとか考えて、この状況をどうにかしなくちゃ、と思う。
でも、この病気は、脳の思考回路が「否定」にしか向かわない。
悪いほうへ、悪いほうへ考えていく「道順」しかたどれない。
だから、普通なら自分で思いつける解決策を、脳が上手く働かないために、
なかなか思いつけないし、ひらめくことも、できない。
反省しようが、後悔しようが、全部、結果としては「自分を責める」、
あるいは「周囲の人や状況を責める」ところにしか、
行き着かないのである。そういう「症状」が出る、病気なのだ。
なのにあなたは、イヤな気分がつづくから、頭で一生懸命、考える。
脱するためにはどうにかしなくちゃ、と思い込んで、考える。
そして、どんどん、悪い方向の思考を増やす。
あれがいけなかった、これもいけなかった、アイツが悪い、あのときにああしなかったらよかった、
あんなことさえ起こらなかったら、あのときなぜ、どうして私は……。
だからね、悪いことばっかり考えたくなる病気なんだよ、本当に。
そんなグルグルした思考を続ける限り、あなたは、よくならない。
咳をしているときに、自分でさらに身体を冷やし、空気を乾燥させ、どんどん、咳をひどくしているのだ。
そうやったら、咳は止まるのか? いや、今度は発熱して、頭も痛くなって、鼻水も止まらなくなる。
なのにあなたは、悪いことを考え続けるのをやめない。どうしてなのだろう?
そこから、抜け出したいからだ。
そして、そんな自分を、キライだと思い、否定し続けるからだ。
咳を否定して止まるのであれば、否定すればいい。
咳を我慢して止まるのであれば、我慢すればいい。
または、さらに新たに身体を冷やし、空気を乾燥させ続ければいい。
それで本当に、あなたの場合、止められるのであれば、ね。
そんなことで咳が止まるはずがないとわかっていて、どうしてやるのか。
弱い自分なんて、認められないからだ。
どうして、病のときに弱かったら、いけないのだろう。
がんばって、無理して、弱って、病になって。
そうして、病人が、弱かったら、なぜ、許せないのだろう。
いいじゃない、病人のときくらい、弱くたって。
弱い自分でも、大切な自分じゃない。
今までの大切な自分は「何かが立派にこなせるから」大切だったの?
「ちゃんとできてる自分」だから、自慢げに、自分のことが大好きだったの?
そんな条件付きで、自分を見てたの?
100点取れるなら、いい子。言うことを聞いてがんばれる子は、いい子。風邪を引かない子は、いい子。
5点しか取れない子は、要らない。言うこと聞かない子なんて、キライ。風邪引くような弱い子はダメ。
そんな「○○できる」ことが条件で、自分を好きとかキライとか、判断してたの?
これ、もし親が、自分の子どもに言い続けてたら、ひどいよね?
条件付きでしか、あなたを愛さない、って言ってるんだよ?
今、あなたは、そんな仕打ちを、自分にずっと、繰り返しているのだ。
それで、そんな仕打ちを続けて、自分が立ち直れるだろうか?
違うよ。
弱った自分を、可哀想に、つらかったね、なんか理由があったんだよね、
病気なんだもんね、今はゆっくり寝て、体力を養おうね、食べたいもの、ある?
そんなふうに「いたわって」あげない限り、この病は、治らないんだよ。
脳が正常な状態に近づいていけば、「そうなった理由」や
「次から気をつけるためのポイント」なども考えられるようになる。
でも、マイナス方向にしか頭が働かないときは、どんなに自分を責めたって、
どんなに自分を追い詰め、叱咤激励したって、どうにもならないのだ。
だって、頭の回路が否定形になって、心も身体も重くなる病気なんだもの。
あなたが否定を続ける限り、あなたは、その病から脱することが相当、困難になる。
なかなか治らない風邪を、ずっとずっと引き続ける。さらに、ときには悪化させる。
本当に治したいのなら、今、自分が病であることを認めようよ。
今、自分が弱っていることを、ゆるそう。
病のときは、そんな自分であっても、いいのだ。
できないのはあなたの「意志がダメ」なのではなく、「病気」のせいだと、わかろう。
そんな自分を、ちゃんと病人のように、親切に扱って、心地よく過ごせるように気を配り、
しっかり眠れるよう、対策をとろう。血行をよくして、足元を温めて、睡眠薬だって、上手に使えばいい。
ご飯も、身体や脳の働きをよくするために、できるだけバランスよく、少しずつでも食べていこう。
本当に、自分がそこから抜け出したいのなら、自分を否定するのではなく、弱さを許し、いたわる。
どんなに遠回りに思えたって、自分に甘いように思えたって、そこから始めるしか、ないんだよ。
そこから始めれば、あなたは、弱い自分がいてもだいじょうぶになる。
それはつまり、あなたが、結果的には強くなるってこと。
その病にかかりにくくなる自分へ、変えてもいけるのだ。
そう、弱い自分を守り、いたわるようにすれば、きっと必ず、抜け出せる。
だから、もう、これ以上の否定は、自分イジメは、やめよう。やめていこう。
あなたという人は世界にたった1人しかいない、大切な大切な存在なのだから。