これもまた、先日の、自分を好きになるという話につながることかもしれない。
鬱、という病にかかったときは、他人との交流も煩わしくなり、かといって一人でいると、自分を否定する。
他者との関係性は、確かに、自分を傷つける場合もあり、簡単には語れないことなので
いずれ、きちんと話していこうと思うが、それが上手くいかない理由のひとつが、
「自分を否定していること」にある。
他人が怖かったり、信用できなかったりするのは、自分が自分を信じていないからだ、と言ったら、
いったい何のことだ? と思われるだろうか。
自分を否定していると、こんな自分を誰かが好きになってくれるはずがない、というブレーキがかかるのだ。
それは恋愛に限らず、同性・異性の友達や、軽いつきあいの知人レベルでも同じ話。
傷つけられるのが怖いという理由だけで、人と上手に接することができないわけではないのだ。
自分の嫌っている部分を人に見せたら、人からも嫌われる、と、思い込んでいるからである。
もちろん、人にイヤなことをするのは「よくない」という認識なら、普通のときにだって、持っているはず。
それを大きく、拡大解釈している、というわけだ。
何もできない自分、上手に対処できない自分、迷惑をかける自分……表現は人によっていろいろあるだろう。
そして実際、鬱という病の中では確かに、心と身体が上手く連携しないために、「失敗」することはある。
すると、それを即「嫌われる」ことへ、つなげてしまうのだ。
そうして、こじれた原因を、自分のせいにする。あるいは、逆に、相手はそんなつもりではなかったのに、
その言動から「こう思っているに違いない」と否定的に思い込んでしまう。
気持ちのブレが大きい今だからこそ、そうした思い込みや勘違いや自信のなさが湧き起こるのだが、
自分では「脳の働きがミスしている」ことを認識できないから、
「私はダメになってしまった」と、判断するのである。
つらいよね、そのグルグルした回路に、はまりこんでしまうと。
では、どうしたら、抜け出せるのだろう。
これも人によってやり方は違うのだが、先日話した「自分を好きになっていい、という許可」を
自分に出すと同時に、「こんな今の自分でもできていること」を見つけていくのは、ひとつの方法だと思う。
たとえば仕事がうまくいかない、と思っているなら、すべての内容に置いて100%全部、できていなかどうかを、
冷静にチェックしてみるのだ。
すると、お客さんとはうまくやりとりできている、手順は間違えていない、電話応対はできている、
計算は間違えていない、整理整頓はできている、進行は遅れていない、出勤はできている、など、
「こんな状態であってもできていること」のひとつやふたつは、見つけられるはずだ。
別にこれは、仕事に限らない。家族や友人との間のやりとりでもいいし、家事ひとつでもいい。
ご飯をちゃんと食べられた、でも、睡眠時間は確保している、でもいい。
どんなときでも、自分ができていることを見つけること。
病で高熱を出して寝込んでいるときでも「休息・安静」には、できるだろう。
毎日、1つでも、見つけること。
それは「こんなひどい状態」であっても、自分ができる、つまり、自分の持っている力なのだ。
得意、不得意もある。だが、できて当たり前だと思っていることが、果たして本当に当たり前なのか。
あなた以外の人も、全員、絶対、必ず上手にできていることなのか。
そうやって、ふだんは気づかなかった「今、自分ができていること」をぜひ一度、確認してみてほしい。
意識不明で病院に入院しているような状態でない限り、あなたには毎日、必ず「できていること」がある。
毎日、適切に排泄していることだって、きちんと食事と水分を必要量摂るからこそ、可能な話。
お風呂につかることができたなら、鬱という病のなかにいるのにそれをできておめでとう! ってことだ。
掃除ができておめでとう。洗濯できておめでとう。そう、できない人はいっぱいいるのだ。
あなたは、気づいていないだろうけれど、あなたが思っているより、もっとたくさんの力を備えている。
鬱という病の中にいる今だからこそ、それをひとつひとつ、見つけてみてほしい。
できないことを数え上げるのではなく、できたことを、意識してほしい。
そして馬鹿馬鹿しいと思えるかもしれないが、毎日ひとつ以上見つけ、丁寧に、自分をホメてみてほしい。
これを繰り返していくと、「自分の完全否定」という思考の枠から、少し、抜け出すきっかけを見つけ始める。
実際に1週間くらいやってみないと、私がここに書いていることの効果は、伝わらないと思う。
ダマされたと思って、ぜひ一度、1週間だけでも、かかさず毎日、やってみてほしい。
自分をホメることを意識し始めると、そのために「やっておこう」という小さな意欲も湧いたりするのだ。
それは本当に小さな小さな意欲だけれど、確実に、あなたに、自分にもまだ何かできる「力」がある、
という自信をくれる。その自信が、今のあなたには、とても大切なのだ。
どんなことでもいい。どうか、自分の力を「過小評価しすぎる」今の暗いループから、
少しでも抜け出してもらえれば、と思う。それを、心から願う。